PyTorch の挙動を調べる必要があった際に、ログ出力の設定を調べたことを書いておこうと思います。
PyTorch の TorchScript のログ出力
PyTorch のモデルを保存する際などに PyTorch 内部で利用される TorchScript には、標準でデバッグ用のログ出力の機能が備わっています。
なお、私は ONNX へのエクスポートの際の挙動のデバッグの際にこのログ出力の機能を用いました。
PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL
環境変数の設定
基本的に、 jit_log.h の冒頭のコメント部分に書かれていることに従って環境変数を設定します。
この環境変数には、以下のようにログ出力したいファイルのファイル名を指定します。
- PyTorch のソースコードを見て、ログを出力したいファイルを探します。
例えば、torch/csrc/jit/passes/onnx/shape_type_inference.cpp
のログを出力したい場合、shape_type_inference.cpp
が設定すべきファイル名になります。 - 出力したいログのレベルは現時点では 3段階あり、その値に応じて
>
をいくつか付与します。 - 複数のファイルのログを出力したい場合は、
:
で区切って連結します。 - 結果として、
shape_type_inference.cpp:>subgraph_matcher.cpp
のような文字列をPYTORCH_JIT_LOG_LEVEL
に設定します。
結果として、 Bash であれば export 'PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL=shape_type_inference.cpp:>subgraph_matcher.cpp'
のように設定します。
Windows 上のコマンドプロンプトを使う場合は、 set "PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL=shape_type_inference.cpp:>subgraph_matcher.cpp"
のように設定します。
>
を含む場合、 '
や "
で囲む必要があるのに注意してください。
ログ出力の例
例として、以下のようなスクリプトを実行する際のログを出力することを考えます。
このスクリプトを実行したときの shape_type_inference.cpp
のログをすべて出力する場合、 >>shape_type_inference.cpp
を PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL
環境変数に設定します。
この状態で上記のスクリプトを実行すると、以下のようなログが出力されます。
Windows 上でログ出力する際の注意事項
実際には、先の例の通りにやっても、 Windows ではログが出力されません。
これは、 v2.0.0 の時点での (おそらく) バグで、 PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL
に設定されたファイル名と __FILE__
を比較する際の不具合によるものです。
StripBasename 関数の中でファイルのフルパスからファイル名部分を抽出していますが、この部分はディレクトリの区切り文字として /
しか見ていません。
そのため、 Windows で __FILE__
に C:\actions-runner\_work\pytorch\pytorch\builder\windows\pytorch\torch\csrc\jit\passes\onnx\shape_type_inference.cpp
のようなファイル名が設定されている際には、ファイル名部分として shape_type_inference.cpp
がうまく抽出されず、 PYTORCH_JIT_LOG_LEVEL
に shape_type_inference.cpp
が設定されていてもうまくログが出力されませんでした。
この場合、 StripBasename
を修正してビルドし直すか、 site-packages\torch\lib\torch_python.dll
をバイナリエディタで直接修正し、 DLL に含まれる C:\actions-runner\_work\pytorch\pytorch\builder\windows\pytorch\torch\csrc\jit\passes\onnx\shape_type_inference.cpp
の部分を C:/actions-runner/_work/pytorch/pytorch/builder/windows/pytorch/torch/csrc/jit/passes/onnx/shape_type_inference.cpp
に変更することで、ログを出力できるようになります。
なお、このプルリクエストで修正されました!
このログを使ってデバッグした話の詳細については、次回以降に書くかもしれません。