SyntaxHighlighter

2013年11月5日火曜日

SevenZipRuby 作成メモ 1 - 7z.dll の概要と、 7z.dll と Ruby の橋渡し

SevenZipRuby 作成メモ 1 - 7z.dll の概要と、 7z.dll と Ruby の橋渡し

これから何回か、 SevenZipRuby を作成する際に悩んだことなどをメモしていこうと思います。

7z.dll のバージョンは 9.20 に基づいていますが、 7z.dll の作者の Igor さんによると、 9.30 でもこのインターフェースは使えるそうです。

なお、念のために断っておきますが、「7z.exe を呼んだらいいんじゃない?」というのはごもっともなのですが、 Ruby 拡張機能を作ること自体が目的なので、いろいろ面倒なことをしています。(DLL を呼ばないとできないこともありますし)


今回は、 7z.dll の概要と、 7z.dll と Ruby のバインディング部分を書くにあたって注意しなければならないことについて書いておきます。
結論としては、 7z.dll を呼ぶ以上、下記の二点を考慮しなければならず、面倒だ、という話です。

  • Ruby の例外機構 (setjmp, longjmp) を考慮した C++ のコーディング
  • 7z.dll が裏で生成する別スレッドを考慮した Ruby のメソッド呼び出し

7z.dll の仕様

今回の gem ライブラリでは、 7z.dll を内部的に呼ぼうと思ったので、 7z.dll の仕様を調べる必要がありました。

7z.dll の仕様は、断片的な情報しか見つかりませんでしたが、 7-Zip の FAQ の How can I add support for 7z archives to my application? に書かれているように、 7-Zip ソースコード中の Client7z.cpp を見るのが楽そうです。

以下では、私が SevenZipRuby を実装する際に調べたことをまとめておきます。
メモ書きだったものを、文体だけ変更して載せているので、あまり読みやすくないと思いますが、何かの参考になればと思います。

7zip アーカイブの展開の流れ

7zip アーカイブを 7z.dll を用いて展開する場合は、以下のような流れになります。

  1. 7z.dll から CreateObject 関数のポインタを取得する。
  2. CreateObject 関数で、 7zip アーカイブの展開用インターフェースである IInArchive インターフェースへのポインタを取得する。
  3. IInArchive でデータを読み込むために、下記のインターフェースの派生クラスを用意する。
    IInStream
    読み込み対象のファイルにアクセスするインターフェース
    IOutStream
    アーカイブ内のデータを展開する際の書き込み先のファイルにアクセスするインターフェース
    IArchiveOpenCallback
    IInArchiveOpen 関数を呼び出す際に必要なインターフェース
    IArchiveExtractCallback
    IInArchiveExtract 関数を呼び出す際に必要なインターフェース
  4. これらのインターフェースの派生クラスのインスタンスを作成し、 IInArchiveOpen, Extract 関数を呼び出す。

CreateObject

7z.dll では、種々のアーカイブをサポートしており、それらを扱うクラスは、 IInArchive もしくは IOutArchive クラスの派生クラスとしてそれぞれ定義されています。
7z.dll でアーカイブを扱う場合、そのアーカイブの種類に合った派生クラスのインスタンスを、 7z.dll がエクスポートしている CreateObject 関数を通じて取得する必要があります。そのため、まずは CreateObject 関数を DLL から取得する必要があります。
CreateObject 関数自体は、 DLL からエクスポートされているので、以下のように取得できます。

IInArchive インターフェースの取得

続いて、取得した CreateObject から、 7zip アーカイブを展開するためのインターフェースを取得します。

CreateObject 関数の第一引数には、 CLSID_CFormat7zCLSID_CFormatZip などのような、アーカイブのファイルフォーマットを示す GUID を渡します。
一覧は CPP/7zip/Guid.txt にまとまっているので、見るとよいでしょう。 例えば CLSID_CFormat7z であれば、 {23170F69-40C1-278A-1000-000110010000} になります。

第二引数には、 IID_IInArchiveIID_IOutArchive を指定します。
今回は、展開用のインターフェースが欲しいので、 IID_IInArchive を指定します。
こちらも、GUID の値は CPP/7zip/Guid.txt に載っています。 IID_IInArchive であれば、 {23170F69-40C1-278A-0000-000600600000} です。

あとは、これで得られた archive ポインタを通じて、好きな処理をしていくことになります。
なお、 IInArchive の定義は、 CPP/7zip/Archive/IArchive.hINTERFACE_IInArchive の部分を見ると分かります。 関数の名前から、だいたい意味は分かるのではないかと思います。

IInArchive でアーカイブを読み込むために必要な諸クラス

IInStream, IOutStream, IArchiveOpenCallback, IArchiveExtractCallback の派生クラスを、すべて定義しておく必要があります。

ここでは、サンプルとして IInStream の派生クラスの定義について記述します。

IInStream のメンバの定義

IInStream は、ファイルの読み込みを抽象化したインターフェースであり、以下の関数を持っています (Read は親クラスの ISequentialInStream のメンバーです) 。
なお、以下の記述は WINAPI などの呼び出し規約を書いていないので、そのままでは使えません。実際の定義では、 STDMETHOD マクロが使われています。

このインターフェースを継承したクラスを独自に作成することで、ファイルから読み込ませることや、ネットワークソケットから読み込ませることなどが自由にできます。

Ruby との橋渡し

7z.dll と Ruby のバインディングを行うには、 7z.dll が必要とする IInStream などのインターフェースを継承したクラスを作成し、そのクラスで適切に Ruby のメソッドを呼んでやることがメインとなります。

エラー処理などを省くと、イメージとしては下記のようになります。

このようにすることで、 7z.dll の世界と Ruby の世界を結ぶことができます。

しかし、上記のようなコードは期待した通りに動きません。
これは、大きくは以下の二点の理由によります。

  • Ruby の例外に対し、安全でない。
  • IInStreamRead, Seek が、別スレッドで呼ばれることがある。

Ruby (MRI) は C で実装されており、 Ruby の例外などの実装には setjmp, longjmp を使っています。
この関数によるジャンプは、 C++ のデストラクタ呼び出しを保証しないので、混在させて使うことができません。
例えば、 RubyInStream::Read の中で Ruby の例外が発生すると、 Read を呼び出した関数で定義されたローカル変数のデストラクタなどは、呼ばれないままにスタックの巻き戻しが発生します。これは容易に 7z.dll のクラッシュを発生させます。

二点目については、 7z.dll と Ruby の実装が深く関わっています。
7z.dll はマルチスレッドで動作するように設計されており、 Read は複数のスレッドから呼ばれることがあります。
7z.dll 側で同期をとった上で呼ばれているので、同時に複数のスレッドから Read が呼ばれることはないのですが、 Ruby の実装の制約上、 GVL という Mutex を取得していないスレッドが、 Ruby の関数を呼ぶことは禁止されています。
そのため、 7z.dll が生成した別スレッドから Read が呼ばれると、そのスレッドは GVL Mutex を取得していないので、 Ruby の関数を呼んではいけません。もし呼んでしまうと、 Ruby が Segmentation Fault で死ぬことになります。

というわけで、 7z.dll を Ruby から使えるようにするためには、以下の二点を考慮した設計にしなければなりません。

  • Ruby の例外機構 (setjmp, longjmp) を考慮した C++ のコーディング
  • 7z.dll が裏で生成する別スレッドを考慮した Ruby のメソッド呼び出し

なんて面倒なんだ。

2013年10月27日日曜日

SevenZipRuby - Ruby 用 7zip gem ライブラリ

SevenZipRuby - Ruby 用 7zip gem ライブラリ

Ruby の C 拡張機能や、 gem ライブラリ作成の勉強をしようと思ったので、 7-Zip のアーカイブを読み書きする拡張ライブラリを作成しました。
まだ開発中で、どこまで作り込むかは不明ですが、とりあえず GitHub に公開しました。
seven_zip_ruby にあるので、興味がありましたらご覧ください。

なお、 API の仕様などは、これから変更されていくだろうと思います。

そこまで深く調べていないので、似たようなライブラリが既にあるかもしれません。

サンプル

README.md にもありますが、以下のように使うことができます。ただし、これは 2013/10/27 時点での API に基づいています。

概要

オフィシャルにリリースされている 7-Zip の DLL である 7z.dll を内部的に呼び出しています。

7zip 圧縮などでは、マルチスレッドで動作します。このあたりの挙動は 7z.dll の挙動に依存します。

Windows, Linux で動作する (はず) です。 Mac OSX はいずれ対応するだろうと思います。

gem にしてありますが、 rubygems にはまだ登録してません。
やったことがないので、まだ方法もよく分かってませんが、いずれ登録します。

作成のポイント

7z.dll の API では、コールバック関数を DLL に登録し、それを適宜呼び出してもらうようになっています。
このコールバック関数の呼び出しは、場合によっては 7z.dll 内で生成された別スレッドから行われることもあります。
これは、 GIL や GVL と呼ばれる Ruby Interpreter の Mutex を持っていない状態でコールバックが呼ばれるということを意味します。
この動作に対応するのが面倒でした。

また、 C++ で作成したので、こちらもやや面倒でした。

これらについては、別途、まとめておこうと思います。

2013年5月28日火曜日

Windows 上の Ruby 2.0 での sqlite3 の利用

Windows 上の Ruby 2.0 での sqlite3 の利用

最近は仕事が忙しすぎて、 mruby もブログも触る暇がないですが、久しぶりの備忘録です。
いくつか mruby などでリクエストをいただいていますが、なかなか対応できていなくて、本当にすみません。

MinGW 版 32bit Ruby 2.0 での sqlite3 の利用

2013年5月27日時点では、 sqlite3 の Windows 用 gem (version 1.3.7) には Ruby 2.0 向けのバイナリが入っていないようです。
そのため、 MinGW 版の 32bit Ruby 2.0 で Rails を使おうとすると、以下のようなエラーが出るようです。

私は RubyInstaller の 32bit 版を使わせていただいていますが、それに向けた sqlite3 のバイナリを置いておきます。
あくまで MinGW 版の 32bit Ruby 2.0 でしか確認していません。

準備とバイナリのダウンロード

下記のコマンドで、 sqlite3 をインストールしておきます。

このコマンドにより、 Ruby が C:/ruby にインストールされている場合は、 C:/ruby/lib/ruby/gems/2.0.0/gems/sqlite3-1.3.7-x86-mingw32 に gem がインストールされると思います。

続いて、 C:/ruby/lib/ruby/gems/2.0.0/gems/sqlite3-1.3.7-x86-mingw32/lib/sqlite3 の下に 2.0 ディレクトリを作成します。
おそらく 1.8, 1.9 というディレクトリは既にあるので、同列に 2.0 ディレクトリを作成します。

あらかじめ作成済みの sqlite3_native.so をダウンロードし、この 2.0 ディレクトリの下に置きます。

後は、普通に使えば大丈夫です。

以下に、作り方などの詳細を書いておきます。

Ruby 2.0 での sqlite3

Ruby から sqlite3 を使うには、 rubygems の sqlite3 を使うのが手軽です。
特に、 Ruby on Rails などでは、デフォルトでこの gem を使うようになっています。

しかし、 2013年5月27日時点では、 sqlite3 の Windows 用 gem には Ruby 2.0 向けのバイナリが入っていないようです。

ここでは、 Windows 上の 32bit 版 Ruby 2.0 で sqlite3 gem を使う方法について、書いておきます。
ただし、いずれは gem 側で解消されるだろうと思いますし、この方法はあくまで単なるパッチです。

Windows 上での Ruby 2.0 での sqlite3 gem の準備

いくつか方法はありますが、私は RubyInstaller を使わせていただいています。

Ruby や DevKit のダウンロードと展開

Ruby 2.0 のダウンロード
RubyInstaller のダウンロードページから、 Ruby 2.0.0-p*** をダウンロードし、好きなところに展開します。
ここでは、 C:/ruby と仮定します。
DevKit のダウンロード
RubyInstaller のダウンロードページから、 DevKit-mingw64-32-4.7.2-20130224-1151-sfx.exe をダウンロードし、好きなところに展開します。
ここでは、 C:/devkit と仮定します。
パスなどの初期設定
コマンドプロンプトを開き、以下のように ruby.exe へのパスを通しておきます。 また、続けて DevKit にもパスを通しておきます。 C:\devkit に移動し、以下のコマンドを実行します。 続いて、 DevKit の初期設定をしておきます。下記のような config.yml を作成します。 以下のコマンドを実行し、 DevKit の初期設定をします。

sqlite3 のダウンロードと展開

SQLite3 のソースコードをダウンロードページからダウンロードしておきます。
Source Code の欄にある sqlite-amalgamation-***.zip がビルドしやすくて便利です。

これを C:\sqlite3 などに展開し、このディレクトリに移動し、以下のコマンドで libsqlite3.a を作成します。

gem のインストール

以下のコマンドで、 sqlite3 gem をインストールします。

2012年11月27日火曜日

AutoIt を Ruby から使い、それを ocra で EXE 化する

AutoIt を Ruby から使い、それを ocra で EXE 化する

ピンポイントな内容で、あまり他の人の役に立つか分かりませんが、ちょっと調べたので書いておきます。

今回の目的は、「AutoIt を呼び出す Ruby スクリプトを ocra で EXE 化し、制限ユーザーでも実行できるようにする」です。

実現方法

予備知識として、ocra による EXE 化はできる前提です。

準備

  1. RubyInstaller から Ruby 1.9.3 をダウンロードし、インストールしておきます。また、bin ディレクトリにパスを通しておきます。
  2. 以下のコマンドで ocra をインストールしておきます。
  3. 続いて AutoIt から AutoIt をダウンロードし、インストールしておきます。
  4. AutoItX/AutoItX3.dll を Ruby の bin ディレクトリ以下にコピーしておきます。
  5. 以下の内容を記述した ruby.exe.manifest を Ruby の bin ディレクトリ以下に作成します。

これで事前準備は完了です。

EXE の生成

以下のような sample.rb を考えます。

これは電卓を起動し、3 + 4 を実行するスクリプトです。電卓のウィンドウを表す文字列は、OS によっては異なるかもしれません。

これをそのまま EXE 化して EXE ファイルを別の実機に持っていっても、AutoItX3.dll が無いので実行できません。AutoItX3.dll も別の実機にコピーし、前もって 「regsvr32 AutoItX3.dll」を実行しておけば可能ですが、これには管理者権限が必要です。

これを回避するために、以下のようなコマンドで EXE 化します。

このようにして生成された EXE ファイルは、制限ユーザーであってもそのまま実行でき、AutoItX3.dll を呼び出すことができます。

説明と補足

以下は、原理の説明などです。

AutoIt

AutoIt とは、Windows の GUI を自動操作することができるツールのことです。

Windows 上で GUI を含んだツールのテストをしたり、GUI プログラムの定型処理を自動化したりするには、それなりに面倒なことが多いのですが、この AutoIt を使うと、割と楽に自動化できます。
同様なことは、.NET からだと Windows 標準の UI Automation などでも可能です。

この AutoIt には、COM インターフェースも用意されており、 COM オブジェクトにアクセスできる言語からは、自由に機能を利用することができます。
実体は AutoItX3.dll で、AutoItX3.Control という ProgID でアクセスできます。

もちろん Ruby からも WIN32OLE を利用することで、呼び出すことができます。
上に書いたように、例えば Windows の電卓 (calc.exe) を起動し、3+4 を計算させる場合は、以下のようになります。

ただし、このスクリプトを実行できるようにするためには、AutoItX3.dll をあらかじめ Windows に登録する必要があります。
インストーラでインストールした場合は登録されているはずですが、自己解凍形式でインストールした場合は、以下のコマンドを管理者権限で実行し、AutoItX3.dll を Windows に登録しておかなければなりません。

EXE 化して実行するときの問題点

上記の Ruby スクリプトを ocra で EXE 化した場合、その EXE を実行する Windows マシンにも AutoItX3.dll がインストール済みでなければなりません。これは多少面倒ですし、管理者権限も必要になってしまいます。
今回の本題は、そのあたりをどうするかについてです。

基本的には、ocra で EXE 化する際に AutoItX3.dll も EXE に含めてしまい、かつスクリプトの内部から制限ユーザーでも呼び出せるようにするということになります。

マニフェストファイル

大きな流れとしては、AutoItX3.dll を EXE の中に組込み、かつマニフェストファイルを作成することで、その DLL ファイルを COM としてアクセスできるようにしてやる、ということになります。

マニフェストファイルとは、EXE ファイルのメタ情報のようなもので、ロードすべき DLL を指定したり、UAC 昇格が必要であることを指定したりする XML ファイルです。

このファイルを用いて、AutoItX3.dll の中に AutoItX3.Control という ProgID の COM オブジェクトがあることを明示し、ruby.exe からアクセスできるようにしてやります。
このマニフェストファイルは、実行する EXE に .manifest をつけた名前にします。

ocra では、ruby.exe やその他の DLL を Temp ディレクトリに展開し、その後 ruby.exe を実行します。
そのため、Temp ディレクトリに展開される際に、マニフェストファイルも展開されるようにすれば、ruby.exe が実行される際にマニフェストファイルで COM 用 DLL を指定することができます。

そのため、以下のようなコマンドで EXE ファイルを作成すれば、AutoItX3.dllruby.exe.manifestruby.exe と同じディレクトリに展開されるようになります。

これで、制限ユーザーであっても、AutoItX3.dll がインストールされていない状況であっても、Ruby スクリプトから AutoIt の COM インターフェースにアクセスできる EXE ができあがります。

ポイント

--dll を使っているところがポイントです。

前提として、ocra で EXE 化されたスクリプトは、まず一時フォルダに ruby.exe 本体やスクリプトや DLL などを展開し、さらに展開した ruby プログラムを実行する、という二段構成になっています。
細かく書くと、EXE を実行すると、ruby.exe 本体が置かれる bin ディレクトリ、ライブラリが置かれる lib ディレクトリ、ユーザーのソースコードが置かれる src ディレクトリの三つをそれぞれ展開し、その後 src 以下のソースコードを bin ディレクトリ以下の ruby.exe によって実行する、という流れになります。

EXE 作成時に --dll オプションを使って指定されたファイルは、EXE 実行時に bin ディレクトリ以下に展開されることになります。
そのため、上の例では、EXE 実行時には以下のような配置になります。

/
bin
ruby.exe
AutoItX3.dll
ruby.exe.manifest
lib
require されたライブラリが配置される。
src
sample.rb

上のように ruby.exe.manifest ファイルを配置することで、展開された ruby.exe が実行される際に、ruby.exe.manifest を読み込ませることができ、結果として AutoItX の COM インターフェースにアクセスできるようになります。

ちなみに、ocraruby として一つのバイナリにまとめてある Ruby の中にも、同様の仕組みで AutoItX3.dll を組み込んであります。

というわけで、何回か仕事で使うツールの内容が続きましたが、忙しかった時期も過ぎつつあり、そろそろこの週末ぐらいからは mruby を触れそうです。

2012年11月4日日曜日

ocraruby - Ruby を一つの EXE にまとめて、簡単に持ち運べるようにしておく

ocraruby - Ruby を一つの EXE にまとめて、簡単に持ち運べるようにしておく

体調を崩していることもあり、なかなか仕事以外で Ruby に触れる機会がないですが、これも業務で使うために家で作ったので公開しておきます。

単一のバイナリのみで、任意の Ruby スクリプトを実行したい

いろいろな Windows PC 上で作業する必要があったり、ちょっと Windows サーバーのメンテナンスをする必要がある場合などにあると便利なので、 ocra を使って単一のバイナリのみで任意の Ruby スクリプトを実行できるようにしたものを作っておきました。
任意とは言っても、gem などの外部ライブラリを必要とするものは動作しません。
あくまで、 Ruby の標準添付ライブラリのみを使用しているスクリプトが動作するということです。

とりあえず Windows で Ruby を触ってみたいというような、 Windows で Ruby を初めて使う方にもよいかもしれません。
サポートはできないですが。

ダウンロード

バイナリのダウンロードは GitHub のダウンロードページからお願いします。
この記事を書いている時点では、Ruby 1.9.3p286 を元にしたものがダウンロードできます。

ocraruby.exe
私が独断で選んだよく使う標準添付ライブラリが入っています。ネットワーク関係が入っていないのは、これらを入れるとサイズが大きくなるからです。
ocrarubyfull.exe
すべての標準添付ライブラリが入っています。
ocrarubylite.exe
標準添付ライブラリなし

仕組み

特に何のひねりがあるわけでもなく、引数で渡されたファイルを load するようなスクリプトを ocra で EXE 化しているだけです。

一応、 ARGV$0 の設定はしてあるので、下記のようなスクリプトも期待通りに動作します。

注意

注意点としては、 ocra を使っているので、 Ruby 本体を Temp ディレクトリに展開する分だけ時間がかかってしまうということです。

ocrarubyfull.exe などでは、5秒以上かかるかもしれません。
これは展開に時間がかかっているのであり、 Ruby は遅いんだな、と勘違いしないでください

来月になればきっと体調も戻り、時間もできると思うので、また色々やりたいことをやろうと思います。

oruby は既にそういう名前のものがあったので ocraruby にしておきました。

ocra による Ruby の EXE 化

ocra による Ruby の EXE 化

近頃はずっと仕事が忙しく、mruby を見たり遊んだりもまったくできないので、業務で使わせていただいている ocra について、主に社内用にメモしておきます。

JsMruby やその他のリクエストに対応できていなくてごめんなさい。

以前にも書きましたが、Ruby 1.8 のときに愛用させていただいていた Exerb は、現在主流の Ruby 1.9 には対応していないようです。
そのため、現在は Ruby 1.9 に対応している ocra を使わせていただいています。
今回はその ocra についてのメモです。
もっと詳細は、 GitHub の ocra のページを参照してください。

Ruby の EXE 化

ocra では、Ruby のスクリプトを Ruby 本体やライブラリとともに、一つの EXE にまとめてくれます。
実行する際は、できた EXE ファイルを、実行したい PC に置くだけで実行することができます。

EXE 化する際には、一度 ocra がそのスクリプトを実行し、スクリプトファイル中で require などで読み込まれたファイルやライブラリを、圧縮して一つのファイルにまとめてくれます。

逆に実行時には、スクリプトファイルや Ruby 本体やライブラリを Temp ディレクトリに展開してから実行されます。

ちなみに、Exerb では require を専用のものに置き換え、ファイルが require されたときに、EXE ファイル本体内に格納されているスクリプトファイルを実行するようになっています。

ocra で定義される定数や環境変数

ocra のように、コンパイル時に一度スクリプトを実行してみるようなものでは、以下の三つの状態をスクリプト内で区別したいときがよくあると思います。

  1. 通常の Ruby で実行されている
  2. ocra でコンパイルされている間に、 require をチェックするために実行されている
  3. ocra で EXE 化された後に、その EXE ファイル経由で実行されている

ocra では、この条件を簡単に見切るために以下の定数や環境変数を参照できます。

定数 Ocra
ocra でコンパイル中のみ定義されています。 EXE ファイル実行中は定義されていません。
そのため、例えば以下のように書けば、コンパイル中のみコードを実行させることができます。
環境変数 OCRA_EXECUTABLE
ocra によって生成された EXE ファイルを実行しているときのみ、実行中の EXE ファイルのフルパスが "\" 区切りで設定されます。
そのため、例えば以下のように書けば、 EXE ファイル実行中のみコードを実行することができます。

各環境での動作

ここでは以下のようなスクリプトを実行し、それらの値やカレントディレクトリなどの環境をまとめておきます。

通常の実行時

このスクリプトを C:/work/test/test.rb として c:/work/test で実行すると、以下のようになります。

EXE 化する時

ocra で EXE 化する場合、ocra によってスクリプトが実行され、その際に require で読み込まれたファイルやライブラリがチェックされます。
この require されるファイルチェックの場合には、以下のようになります。

このように、EXE 化する時には Ocra という定数が定義されます。
通常のスクリプトは、EXE 化する際には本処理を実行したくないことが多いので、たいていは以下のように書くことになると思います。

EXE 実行時

できた test.exe を実行すると、以下のようになります。

このように、EXE 実行時には OCRA_EXECUTABLE という環境変数が、 EXE ファイルのフルパスとして定義されます。

また、上で書いたように ocra はスクリプトファイルなどを Temp ディレクトリに展開した状態で実行しますが、 __FILE__$0 を見ると、確かに Temp ディレクトリの中に展開されていることが分かります。

EXE ファイルへの他のファイルの同梱

ocra は require で読み込んだファイルを自動で検出して EXE ファイルに含めてくれますが、明示的にスクリプトファイルやその他のファイルを含めることもできます。

やり方は簡単で、 EXE を作るときに ocra.bat に渡す引数に加えてやればよいだけです。

こうすると、 EXE 実行時には、 7za.exesample.rb と同じディレクトリに展開されます。
つまり、 sample.rb 内であれば File.dirname(__FILE__) + "/7za.exe" でパスを得ることができるので、別の EXE を同梱して Ruby スクリプト実行時に参照することも可能です。

2012年9月17日月曜日

JsMruby - mruby NPAPI plugin

JsMruby - mruby NPAPI plugin

mruby を Firefox, Google Chrome で動作するようにしました。

mruby

mruby on EFI Shell でも書いたように、 mruby は、Ruby の作者であるまつもとさんが開発されている「組込み向け軽量 Ruby」の実装です。

前回は、単に EFI Shell 上で動くようにコンパイルしただけでしたが、今回は Firefox, Chrome 上から mruby スクリプトを実行でき、 JavaScript の関数も呼べるようにしてみました。

JsMruby - mruby NPAPI plugin

Firefox, Chrome 上で動作する mruby の NPAPI plugin を作ってみました。

サンプル

このプラグインを Firefox, Chrome にインストールしていると、以下のような書き方ができます。

ちょっと長いですが、全文を載せます。

この HTML ファイルを開き、 Draw ボタンをクリックすると、 canvas に正方形が描かれます。

もう少し長いサンプルとしては、マンデルブロ集合を描くサンプルを参照してみてください。
このサンプルでは Draw を押してから 3 秒ぐらい待ってから描画されます。

このように、割とシームレスに JavaScript のメソッドが呼べ、これまで JavaScript で書かねばならなかったものを mruby で書けるようになります。

概要

現在のところ、以下のようなことができます。上のサンプルを参照しながら読んでみてください。
ただし、これらは今後の実装次第で変わっていくだろうと思います。

JavaScript から mruby スクリプトの実行

object タグで NPAPI プラグインを読み込みます。

このオブジェクトに対して、load メソッドで mruby スクリプトをパースし、実行できます。

その後は、 send メソッドで、 mruby スクリプト内で定義したメソッドを直接実行することができます。

mruby から JavaScript スクリプトの実行

逆に mruby スクリプト側からは、 JsObj.get() メソッドで JavaScript のオブジェクトを取得できます。

現在の実装では、 Array, String, Integer, Double などに関しては、 mruby の該当するオブジェクトに変換されます。
また、 DOM オブジェクトなどの場合は、 DOM オブジェクトそのものをラップした JsObj クラスのインスタンスが返され、そのインスタンスに対しては、通常の DOM オブジェクトに対するメソッドを呼び出すことができます。(createElement などを呼べます)
function の場合は、 mruby の Proc オブジェクトのようなものが返されます。(ただし call メソッドでしか呼び出せません)

制限

現在のものは、あくまでアルファ版なのでクラッシュしたりうまく動かなかったりするだろうと思います。

特に、例外まわりやガベージコレクションまわりについては、それほどきちんと考えて書いていないので、不具合が多く眠っているだろうと思います。

ダウンロードとインストール

いずれも GitHub のページからダウンロードできます。

まだ Windows 向けにしか作成していないので、 Mac などでは動きません。

Firefox
jsmruby_0_0_1.xpi をダウンロードし、そのファイルを Firefox に Drag & Drop するとインストールできます。
このアドオンは、単に JsMruby の NPAPI プラグインを含んでいるだけのものです。
余談ですが、 NPAPI プラグインを含むアドオンを作成する場合は、 install.rdf 内に <em:unpack>true</em:unpack> の一行を書く必要があります。
Chrome
jsmruby_0_0_1.zip をダウンロードし、そのファイルをローカルで展開します。
Chrome の「ツール」-「拡張機能」を開いて「デベロッパーモード」にチェックを入れ、「パッケージ化されていない拡張機能を読み込む」から展開したディレクトリを指定して読み込みます。

ソースコードは GitHub の JsMruby のページで見られます。
まだ整理できていないですが、そのうち整理します。
また、 Mozilla のサンプルソースを使っている関係上、一部のファイルのみ NPL ですが、それ以外のファイルに関しては MIT ライセンスとする予定です。

ブラウザ上の Ruby

既に本家の Ruby では、 Ruby 2.0 にて Chrome の NaCl に対応することが表明されています。
似たようなのを作っておいて書くのも何ですが、私はこちらにとても期待しています。

また、 mruby についても既に試されている方がいらっしゃいます。

私はまだそれほど NaCl や PPAPI については勉強していないのと、 Chrome よりも Firefox が好きなので Firefox で動かしたい、という動機があったので、この NPAPI 版のプラグインを作ってみました。
というか、 masuidrive さんの MobiRuby の講演を聞いて、「いいなぁ」と思って自分も何か作りたくなったというのが本音です。

EFI Shell 版の方は、使いたい人はあまりいないと思いますが、 Windows 8 リリースまでにはまとめようかと思っています。

暇を見つけて Mac 版や、ドキュメントの作成などをします。たぶん。