SyntaxHighlighter

2012年11月27日火曜日

AutoIt を Ruby から使い、それを ocra で EXE 化する

AutoIt を Ruby から使い、それを ocra で EXE 化する

ピンポイントな内容で、あまり他の人の役に立つか分かりませんが、ちょっと調べたので書いておきます。

今回の目的は、「AutoIt を呼び出す Ruby スクリプトを ocra で EXE 化し、制限ユーザーでも実行できるようにする」です。

実現方法

予備知識として、ocra による EXE 化はできる前提です。

準備

  1. RubyInstaller から Ruby 1.9.3 をダウンロードし、インストールしておきます。また、bin ディレクトリにパスを通しておきます。
  2. 以下のコマンドで ocra をインストールしておきます。
  3. 続いて AutoIt から AutoIt をダウンロードし、インストールしておきます。
  4. AutoItX/AutoItX3.dll を Ruby の bin ディレクトリ以下にコピーしておきます。
  5. 以下の内容を記述した ruby.exe.manifest を Ruby の bin ディレクトリ以下に作成します。

これで事前準備は完了です。

EXE の生成

以下のような sample.rb を考えます。

これは電卓を起動し、3 + 4 を実行するスクリプトです。電卓のウィンドウを表す文字列は、OS によっては異なるかもしれません。

これをそのまま EXE 化して EXE ファイルを別の実機に持っていっても、AutoItX3.dll が無いので実行できません。AutoItX3.dll も別の実機にコピーし、前もって 「regsvr32 AutoItX3.dll」を実行しておけば可能ですが、これには管理者権限が必要です。

これを回避するために、以下のようなコマンドで EXE 化します。

このようにして生成された EXE ファイルは、制限ユーザーであってもそのまま実行でき、AutoItX3.dll を呼び出すことができます。

説明と補足

以下は、原理の説明などです。

AutoIt

AutoIt とは、Windows の GUI を自動操作することができるツールのことです。

Windows 上で GUI を含んだツールのテストをしたり、GUI プログラムの定型処理を自動化したりするには、それなりに面倒なことが多いのですが、この AutoIt を使うと、割と楽に自動化できます。
同様なことは、.NET からだと Windows 標準の UI Automation などでも可能です。

この AutoIt には、COM インターフェースも用意されており、 COM オブジェクトにアクセスできる言語からは、自由に機能を利用することができます。
実体は AutoItX3.dll で、AutoItX3.Control という ProgID でアクセスできます。

もちろん Ruby からも WIN32OLE を利用することで、呼び出すことができます。
上に書いたように、例えば Windows の電卓 (calc.exe) を起動し、3+4 を計算させる場合は、以下のようになります。

ただし、このスクリプトを実行できるようにするためには、AutoItX3.dll をあらかじめ Windows に登録する必要があります。
インストーラでインストールした場合は登録されているはずですが、自己解凍形式でインストールした場合は、以下のコマンドを管理者権限で実行し、AutoItX3.dll を Windows に登録しておかなければなりません。

EXE 化して実行するときの問題点

上記の Ruby スクリプトを ocra で EXE 化した場合、その EXE を実行する Windows マシンにも AutoItX3.dll がインストール済みでなければなりません。これは多少面倒ですし、管理者権限も必要になってしまいます。
今回の本題は、そのあたりをどうするかについてです。

基本的には、ocra で EXE 化する際に AutoItX3.dll も EXE に含めてしまい、かつスクリプトの内部から制限ユーザーでも呼び出せるようにするということになります。

マニフェストファイル

大きな流れとしては、AutoItX3.dll を EXE の中に組込み、かつマニフェストファイルを作成することで、その DLL ファイルを COM としてアクセスできるようにしてやる、ということになります。

マニフェストファイルとは、EXE ファイルのメタ情報のようなもので、ロードすべき DLL を指定したり、UAC 昇格が必要であることを指定したりする XML ファイルです。

このファイルを用いて、AutoItX3.dll の中に AutoItX3.Control という ProgID の COM オブジェクトがあることを明示し、ruby.exe からアクセスできるようにしてやります。
このマニフェストファイルは、実行する EXE に .manifest をつけた名前にします。

ocra では、ruby.exe やその他の DLL を Temp ディレクトリに展開し、その後 ruby.exe を実行します。
そのため、Temp ディレクトリに展開される際に、マニフェストファイルも展開されるようにすれば、ruby.exe が実行される際にマニフェストファイルで COM 用 DLL を指定することができます。

そのため、以下のようなコマンドで EXE ファイルを作成すれば、AutoItX3.dllruby.exe.manifestruby.exe と同じディレクトリに展開されるようになります。

これで、制限ユーザーであっても、AutoItX3.dll がインストールされていない状況であっても、Ruby スクリプトから AutoIt の COM インターフェースにアクセスできる EXE ができあがります。

ポイント

--dll を使っているところがポイントです。

前提として、ocra で EXE 化されたスクリプトは、まず一時フォルダに ruby.exe 本体やスクリプトや DLL などを展開し、さらに展開した ruby プログラムを実行する、という二段構成になっています。
細かく書くと、EXE を実行すると、ruby.exe 本体が置かれる bin ディレクトリ、ライブラリが置かれる lib ディレクトリ、ユーザーのソースコードが置かれる src ディレクトリの三つをそれぞれ展開し、その後 src 以下のソースコードを bin ディレクトリ以下の ruby.exe によって実行する、という流れになります。

EXE 作成時に --dll オプションを使って指定されたファイルは、EXE 実行時に bin ディレクトリ以下に展開されることになります。
そのため、上の例では、EXE 実行時には以下のような配置になります。

/
bin
ruby.exe
AutoItX3.dll
ruby.exe.manifest
lib
require されたライブラリが配置される。
src
sample.rb

上のように ruby.exe.manifest ファイルを配置することで、展開された ruby.exe が実行される際に、ruby.exe.manifest を読み込ませることができ、結果として AutoItX の COM インターフェースにアクセスできるようになります。

ちなみに、ocraruby として一つのバイナリにまとめてある Ruby の中にも、同様の仕組みで AutoItX3.dll を組み込んであります。

というわけで、何回か仕事で使うツールの内容が続きましたが、忙しかった時期も過ぎつつあり、そろそろこの週末ぐらいからは mruby を触れそうです。

2012年11月4日日曜日

ocraruby - Ruby を一つの EXE にまとめて、簡単に持ち運べるようにしておく

ocraruby - Ruby を一つの EXE にまとめて、簡単に持ち運べるようにしておく

体調を崩していることもあり、なかなか仕事以外で Ruby に触れる機会がないですが、これも業務で使うために家で作ったので公開しておきます。

単一のバイナリのみで、任意の Ruby スクリプトを実行したい

いろいろな Windows PC 上で作業する必要があったり、ちょっと Windows サーバーのメンテナンスをする必要がある場合などにあると便利なので、 ocra を使って単一のバイナリのみで任意の Ruby スクリプトを実行できるようにしたものを作っておきました。
任意とは言っても、gem などの外部ライブラリを必要とするものは動作しません。
あくまで、 Ruby の標準添付ライブラリのみを使用しているスクリプトが動作するということです。

とりあえず Windows で Ruby を触ってみたいというような、 Windows で Ruby を初めて使う方にもよいかもしれません。
サポートはできないですが。

ダウンロード

バイナリのダウンロードは GitHub のダウンロードページからお願いします。
この記事を書いている時点では、Ruby 1.9.3p286 を元にしたものがダウンロードできます。

ocraruby.exe
私が独断で選んだよく使う標準添付ライブラリが入っています。ネットワーク関係が入っていないのは、これらを入れるとサイズが大きくなるからです。
ocrarubyfull.exe
すべての標準添付ライブラリが入っています。
ocrarubylite.exe
標準添付ライブラリなし

仕組み

特に何のひねりがあるわけでもなく、引数で渡されたファイルを load するようなスクリプトを ocra で EXE 化しているだけです。

一応、 ARGV$0 の設定はしてあるので、下記のようなスクリプトも期待通りに動作します。

注意

注意点としては、 ocra を使っているので、 Ruby 本体を Temp ディレクトリに展開する分だけ時間がかかってしまうということです。

ocrarubyfull.exe などでは、5秒以上かかるかもしれません。
これは展開に時間がかかっているのであり、 Ruby は遅いんだな、と勘違いしないでください

来月になればきっと体調も戻り、時間もできると思うので、また色々やりたいことをやろうと思います。

oruby は既にそういう名前のものがあったので ocraruby にしておきました。

ocra による Ruby の EXE 化

ocra による Ruby の EXE 化

近頃はずっと仕事が忙しく、mruby を見たり遊んだりもまったくできないので、業務で使わせていただいている ocra について、主に社内用にメモしておきます。

JsMruby やその他のリクエストに対応できていなくてごめんなさい。

以前にも書きましたが、Ruby 1.8 のときに愛用させていただいていた Exerb は、現在主流の Ruby 1.9 には対応していないようです。
そのため、現在は Ruby 1.9 に対応している ocra を使わせていただいています。
今回はその ocra についてのメモです。
もっと詳細は、 GitHub の ocra のページを参照してください。

Ruby の EXE 化

ocra では、Ruby のスクリプトを Ruby 本体やライブラリとともに、一つの EXE にまとめてくれます。
実行する際は、できた EXE ファイルを、実行したい PC に置くだけで実行することができます。

EXE 化する際には、一度 ocra がそのスクリプトを実行し、スクリプトファイル中で require などで読み込まれたファイルやライブラリを、圧縮して一つのファイルにまとめてくれます。

逆に実行時には、スクリプトファイルや Ruby 本体やライブラリを Temp ディレクトリに展開してから実行されます。

ちなみに、Exerb では require を専用のものに置き換え、ファイルが require されたときに、EXE ファイル本体内に格納されているスクリプトファイルを実行するようになっています。

ocra で定義される定数や環境変数

ocra のように、コンパイル時に一度スクリプトを実行してみるようなものでは、以下の三つの状態をスクリプト内で区別したいときがよくあると思います。

  1. 通常の Ruby で実行されている
  2. ocra でコンパイルされている間に、 require をチェックするために実行されている
  3. ocra で EXE 化された後に、その EXE ファイル経由で実行されている

ocra では、この条件を簡単に見切るために以下の定数や環境変数を参照できます。

定数 Ocra
ocra でコンパイル中のみ定義されています。 EXE ファイル実行中は定義されていません。
そのため、例えば以下のように書けば、コンパイル中のみコードを実行させることができます。
環境変数 OCRA_EXECUTABLE
ocra によって生成された EXE ファイルを実行しているときのみ、実行中の EXE ファイルのフルパスが "\" 区切りで設定されます。
そのため、例えば以下のように書けば、 EXE ファイル実行中のみコードを実行することができます。

各環境での動作

ここでは以下のようなスクリプトを実行し、それらの値やカレントディレクトリなどの環境をまとめておきます。

通常の実行時

このスクリプトを C:/work/test/test.rb として c:/work/test で実行すると、以下のようになります。

EXE 化する時

ocra で EXE 化する場合、ocra によってスクリプトが実行され、その際に require で読み込まれたファイルやライブラリがチェックされます。
この require されるファイルチェックの場合には、以下のようになります。

このように、EXE 化する時には Ocra という定数が定義されます。
通常のスクリプトは、EXE 化する際には本処理を実行したくないことが多いので、たいていは以下のように書くことになると思います。

EXE 実行時

できた test.exe を実行すると、以下のようになります。

このように、EXE 実行時には OCRA_EXECUTABLE という環境変数が、 EXE ファイルのフルパスとして定義されます。

また、上で書いたように ocra はスクリプトファイルなどを Temp ディレクトリに展開した状態で実行しますが、 __FILE__$0 を見ると、確かに Temp ディレクトリの中に展開されていることが分かります。

EXE ファイルへの他のファイルの同梱

ocra は require で読み込んだファイルを自動で検出して EXE ファイルに含めてくれますが、明示的にスクリプトファイルやその他のファイルを含めることもできます。

やり方は簡単で、 EXE を作るときに ocra.bat に渡す引数に加えてやればよいだけです。

こうすると、 EXE 実行時には、 7za.exesample.rb と同じディレクトリに展開されます。
つまり、 sample.rb 内であれば File.dirname(__FILE__) + "/7za.exe" でパスを得ることができるので、別の EXE を同梱して Ruby スクリプト実行時に参照することも可能です。